木曜日、窓の外は今日も晴れ。
しかし、わたしの机は今日も雨。
わたしは少しドキドキしながら、机を見た。
(自分はうさぎです。名前は「凛」といいます。あなたの名前はなんですか?)
凛の上には「りん」と読み仮名がふってあった。
「凛」という漢字に「りん」以外の読み方を知らないわたし。
昨日と変わらない癖のある文字だった。
少し考えた。
この「凛」という名前はこの「うさぎ」の名前であるのか。
それとも、この文字の主であるのか。
そして、自分は何と返事をしようか。
ふと思った。
ここはわたしの席。
だけど、名前はどこにも書いていない。
同じクラスの人でなければ、もしかしたらこの「凛」という人もわたしを知らないのかもしれない。
何だか突然複雑な気持ちになった。
もし、わたしのことを知らないならば知ってほしい。
だけど、知られたくない。
そして、わたしはこう書いた。
(わたしは「咲良」です。「さくら」と読みます。)
この学校の制服は名札がない。
だからすれ違っても気付かないでしょう。
だから本名を書いた。