【短】桜の涙に恋焦がれ


「熱、ある?」

「本気ですよ」



 どうやら本気の告白らしい。
 思考が追いつかなくてぼんやりと彼を眺めていたら、ドンっとさっきと同じ音が後ろで聞こえた。


 桜ドンだ。もう慣れた。いや、慣れたのか?



「ちゃんと聞いてくれますか?」

「は、はい」



 柳瀬くんの迫力に負けて、わたしは敬語で返事をしてしまう。



「咲川琴美さんが好きです!」



 雨音が邪魔をする。
 心がざわざわする。
 さっきまでとは違う胸の苦しさが、熱を帯びた気持ちが、目の前の男をちゃんと見ろって訴えてくる。



「柳瀬くん」



 柳瀬くんはわたしを短大卒じゃなくて、一人の人間として女として見てくれた。
 だからわたしも彼のおかげで居心地のよい時間を過ごせた。


 わたしが忘れていたことも全部覚えていた。
 きっとわたしの性格もわかっていたから、愚痴を聞いて今日みたいに元気づけてくれた。


 断る理由がない。
 でも、あるとすれば……。