【短】桜の涙に恋焦がれ


「柳瀬くんはどうしてそこまでするの? だって、わたしは同僚だけど。会社では……」

「ライバルにもなりうる、ですよね」

「え?」

「かつて俺も言いました」



 だから、これでおあいこ。そう言って柳瀬くんが笑った。笑うところ初めて見たかも。



「ライバルなら、弱っているところを蹴落としたくはありません。殴るくらい勢いのある咲川さんと戦いたいです」

「どうしてそんなに優しいのよ」



 一瞬、静かになった。
 相変わらずの雨音が耳を塞いだかのよう。桜まで落ちてしまいそうな勢いに、少し不安になった時だった。



「好きだからです」



 両肩を掴まれて真剣な眼差しで、柳瀬くんが言う。