あっちじゃなくて、俺のほう向いて。

ちょっと心配してた。

芳樹くんはそう言って、繋いでいた手を少し強く握った。


「手、寒くない?」

「んー、ちょっと。」

「手袋してこないから笑」

「だって、忘れちゃったんだもん。」


しょーがないなぁ、なんて言いながらも

芳樹くんは私の手を握ったまま

その手を上着のポケットにつっこんだ。