あっちじゃなくて、俺のほう向いて。

「……ほんと、しょーがない人ですね。」


助手席に乗っただけで楽しそうにしている先輩をみて

俺は少しだけ安心した。


「…昨日の夜は、ごめんね…?」

「別に電話くらいいつでもいーっすよ。」

「ありがと…。蓮はほんとに、優しいね。」

「別に、普通ですよ。」


誰にでも優しい訳じゃないですけど、

そんな言葉を飲み込んで、俺はそう言った。