★希side★

姫莉が叶夜を追い掛ける様にして温室を出て行った。

「依恋、また寝ちゃったね」
麗王が依恋の横にしゃがみ込み、依恋の髪に手を滑らした。
「そうだね。でも、仕方無いっしょ。依恋は・・・」
病気なんだから。
「そうだな」
宙がそう言って、依恋を抱える。
お姫様抱っこだ。
そしてそのまま、ベッドのある、温室の奥の部屋へ向かう。

「麗王、ちょっとドア開けて」
宙は顎を突き出し、指示をする。
「希は布団捲って」
俺も指示された様に、手前のベッドの布団を捲る。
宙はそこに依恋をそっと置く。
俺は依恋に優しく布団を掛ける。
「あ、僕、咲に連絡して来るね」
麗王がポケットからスマホを出して部屋の外へ出る。

俺と宙は、依恋の隣のベッドに腰を下ろした。
「はあ。最近無いと思ってたら・・・。油断してたわ」
依恋の寝顔にそっと視線を移す。
依恋はいつも幸せそうに寝ている。
まるで、起きると言う事を知らないかの様に・・・。
もう、二度と起きない様に・・・。
一体どんな夢を見ているんだろう。

「だよな。俺も」
宙は何処か悲しげな顔をした。
昔からそうだった。
依恋の事を一番心配していた。
依恋の事を一番に考えていた。
依恋の事を一番大切にしていた。
それが宙だ。
宙は凄く良い奴だ。
嘘を吐け無い、真っ直ぐな性格をしている。
だけど、俺は知っている。
昔から嘘や隠し事をしてい無い宙が、一つだけ秘密にしている事を。
それは、本人もしっかりと気が付いてい無いかも知れない。

「この病気、何時になったら治るんだろうな」
宙が依恋の髪をそっと撫でる。

宙は依恋が好き。
ずっと前から。
あの時、手を差し伸べられ、出会った時から。

あの時、あの子に手を差し伸べられ、後ろにいた依恋に出会った時から。