気が付いたらうちは、病院のベットにおった。
隣のベットには、数人が泣いとった。
『・・・何で泣いとんの?』
うちは起き上がり、彼らの方に向けて聞いた。
彼らは一瞬驚いた顔をした。

『アンタのッ・・・!』
水色の彼がうちにそう叫ぶ。
それを赤色の彼女は片手で制する。
『いや、何でも無いの』
赤色の彼女は笑う。
泣きながら笑う。
うちはその姿に息を飲んだ。
とても美しかったからや。

『名前は?』
黒色の彼が、うちにそう聞く。
『姫莉、麻生姫莉やお!よろしく!!』
そう、出来るだけ明るく答えた。

『・・・ここ病院なんだけど。』
緑色の彼が、不機嫌そうにうちを睨む。
しまった。
失敗した。
そもそも、この病室には他にも患者がいるんや。
何を大きな声で言っとるんやろう。

『ねえ、何で“よろしく”なの?僕達は今までも、これからも、アンタとは関わる事が無いと思うんだけど。』
水色の彼がうちにそう、冷たく言い放つ。
確かにそうや。
今まで何の共通点も無かった知らない人から急に、“よろしく”って言われたって、どうしようも無い。
うちはそんなことまで頭が回らんかった。

彼らの制服を見ればすぐに分かったのに・・・。
水色のカッターシャツに、白いカーディガン。
黒のチェックのリボンとネクタイ。
白い線が入った黒いスカートに、柄の無い黒いズボン。

彼らは私立桜蘭学園の生徒や。

それに、彼らのカーディガンにはクラスが彫られとる、金色のバッチが付けられとった。
バッチにはS・Aと彫られとる。
1番上のクラスや。
歳は同じくらいやから、中3やろう。
彼らはうちと同じ歳て、うちの憧れていた学園におる。
しかも最上級のクラスや。
うちがどんなに頑張っても、半年ぐらいしかおれんのに、彼らは頑張らんくても、入る事が許されてとる。

お金持ちの彼らと貧乏なうちは、一生関わる事が無い。
なのに“よろしく”とは、実に考えの無いバカな発言やった。
つくづく、うちはバカや。