「大丈夫?」
叶夜は、優しくそう聞く。
叶夜の声を聞くと、何故か不意に涙が出て来そうになる。
「うん、大丈夫!」
「本当?」
やっぱり、叶夜は気付いてるんだ。
叶夜だけは昔から騙せなかった。
いつも、誰よりも早く、私の事に気付いてくれていた。

「あはは、やっぱり叶夜には分かっちゃうのか」
私は力無く笑った。
「無理、すんなよ」
その言葉で私は、目頭がジーンと熱くなった。
叶夜は私のベットに腰掛ける。
私はベットの上で胡座をして、頭は叶夜の背中に付ける。

「辛い。怠い。気持ち悪い。身体中が熱い。えらい」
「大丈夫、すぐに治る」
「・・・今日ね?靴が隠されてたの」
「うん」
「凄く怖かった。私、何かしたのかなって、思った」
いつの間にか、私の声は弱々しくなっていた。
気が付くと、私は大粒の涙を溢していた。
「でもね?私、何もしてないの。何もした覚えがないの」
「そっか、じゃあ、俺らが靴隠した人見つける。だから依恋は何も心配する必要ない」
言いながら叶夜は私の髪をわしゃわしゃと撫でた。
そして、私の頬を両手で包み込むようにして、私の顔を上げる。

「依恋はただ、側にいてくれるだけでいい。」

叶夜は両手の親指で、私の両目から溢れ出した涙を拭き取る。
そして、掛けていた伊達眼鏡を私に掛ける。
泣いているのを隠してくれたのだろう。

「依恋は俺らに囲まれて、笑っていれば良い。ただ、いてくれさえすれば良い」

叶夜は私の頭を、自分の胸に抱き寄せた。

「だから、笑って。」

私の頭を優しく撫でながらそう言った君に、私は不意にときめいてしまった。