『楠見遥香28歳。職業はOLです』
『分かりました。ではさっそく見てみましょう』
『よろしくお願いします!』

買い物帰りにたまたま通りがかった占いの部屋。
いかにもな雰囲気のおば……お姉さんがそれらしい球体やタロットカードなど占いグッズに囲まれながらPCを弄っている。
今時はなんでも機械がやってくれるらしい。

ぼんやりお姉さんを眺めながら何か良いことないかなぁとヤル気なさげに考える。

最初の女の曲がり角を過ぎてから心も体も調子が悪い。
憂鬱な毎日を見ないように必死に仕事に打ち込んでいたらあっという間に月日が流れていた。
恋にオシャレに自分を磨いていた同期入社の寿退社ラッシュの波に私は見事に乗り遅れすっかり取り残されてしまったのだ。
結婚したって仕事はしていたいって思ってたけど、そもそもそんな話をする相手がいない。

彼氏はしばらくいない。
ほとんど友達もいない。
このままいくと…孤独死まっしぐら。
完全に崖っぷち。

ここらで一発逆転お願いします!

カチャカチャカチャカチャ
激しいタイピングの音に遠くに行っていた意識が一気に現実に引き戻される。
何か分かったのだろうか。

『明日恋愛運が急上昇しているわ』
『え、明日!?ピンポイントっすね』
『ええ、だけどあんまり良くないの』
『え?恋愛運上がってるんじゃないんです?』
『真実の愛に辿り着ければね』
『……つまり……どういうことですか…?』
『とにかくラッキーカラーはネイビー。それがきっかけになるわ』
『きっかけ…?』
『シュートのチャンスは巡ってくる。生かすも殺すもあなた次第。あなたに回ってきたボールをどんな障害があっても乗り越え無事にゴールまで導くのよ』
『はぁ……?』
『他人の心のゴールネットをあなたは揺らす事が出来るかしら』
『え……サッカーの話しです?』