「入力したらついでに日付順にファイルしといてもらえると助かる」

そう言いながら忙しそうに自席に戻る山田さんを見送った。
正直、余裕があるというほど、時間も能力もないと感じた。何しろ、金曜日は明日だ。

(あと半日、か。)

今日頑張って残業すればできる量ではあると思う。
椅子に座ってアイスコーヒーを手に取る。

(ごめんなさい、私コーヒー飲めないです)

心の中で謝っておく。恐らく別の誰かのお腹におさまるだろう。

山田さんが仕事を振り分けてくれるということは、「使えない後輩」と思われている訳ではないと思う。
でも、それでも時々、気合の入ったメイクと服で定時に上がっていく山田さんと、彼女に頼まれた仕事の山を見比べて「都合よく使われてるのかな」という思いが頭の隅をかすめることがある。
その度に私は、そんなことを言える程、山田さんの業務に貢献できているのか。2年目の分際で思い上がっているぞ、と自分を戒める。