蓉子さんの声がなんだか遠くから聞こえてくる。

酔っぱらいの相手は本当に面倒だろうと思う。

けれど、酔いたくもなる。

法務部で働く私が未遂とはいえ結婚詐欺に遭遇するなど、なんの冗談かと笑ってしまう。

そして、とても腹立たしい。

様々な感情が交錯して、身体も心もクタクタになっていた。

「律華!?律華!?」

蓉子さんの呼び掛けに応えることが出来なかった。

私のその日の記憶はそこでプツリと途切れた。