「そういうことです」
西条先生は平然と言いきった。
「西条先生、律華のこと、よろしくお願いしますね」
蓉子さんはウィンクして法務部のフロアを出ていった。
「西条先生!蓉子さん、完全に勘違いしてますよ!?」
「ん?嘘は言ってないけど?」
確かにそうだけど…。
「ゴホン。安住さん、そろそろ打ち合わせに行きなさい」
わざとらしい咳払いをしながら近づいてきたのは、法務部の部長だ。
周りを見渡せば、みんなの視線が私たちに向けられている。
そりゃ誰もウチの顧問弁護士の言うことを疑ったりはしないと思うけど。
「はい、部長。行ってきます…」
肩を落としながら、西条先生に付いて打ち合わせ場所に向かった。