そんな俺のことを知ってか知らずか、周りはお節介を焼いてくる。
35歳の独身男を放っておくつもりはないようだ。
俺の所属する弁護士事務所の所長しかり、専務しかり。
確か所長と専務は大学の先輩後輩。
裏で密談があったのだろうと容易に想像出来た。
「所長の差し金ですか?」
思わずジト目で専務を見た。
これくらいの文句は言ってもいいだろう。
「はて、なんのことでしょう?」
白々しくとぼけた専務と奥様は手を振りながら去って行った。
二人の後ろ姿は実に楽しそうだ。
大きく溜め息をついて天井を仰ぎ見て、それから彼女に視線を向けた。
彼女はスースーと寝息を立てている。
さすがに放っておくことは出来ない。

