〜修也side〜




『お前なら手を伸ばせば助けられたっ』



確かにそうだ。…俺の瞳は美月を捉えていた。そして、多分美月も…。……手を伸ばせば届く距離だった。


けど…



『私に関わらないで』



あの瞬間、美月の言葉が頭をよぎったんだ。



…美月を抱きしめて落ちていった香月を見て愕然とした。あんなにも、迷いなく手を伸ばした香月に…。



『…美月を階段から落としたやつ…でてこい。……今なら気絶で済む』



本当に香月なのかと疑いたくなるほどの殺気だった。……今まで見たことがない。…俺は手が震えた。これほどの殺気を放つやつを初めてみた、そう言えるほどのすごい殺気だ。



『そんな女1人にっ』



陸の言葉に香月は「大切な…」といいかけた。愛おしそうに、そして苦しそうに。


俺には、そのとき香月が泣いているように見えた。涙を流しているように。……1度瞬きをすると涙は消えてしまって、幻影かなにかかと思ったけど…あれは香月の心の想いなのかもしれない。