「課長には入社以来、大変お世話になりました。ありがとうございました」

「なによ、そんなあらたまって。浅沼さんは優秀だから、辞められると困るわね~」

「申し訳ありません」

「これは上に廻すけど、すぐには無理かもしれない。浅沼さんクラスの優秀な人材って社内にはなかなかいないし、いても所属長が手放さないと思うし」

私はそんな誉められるような優秀な人材ではない。

代わりはいくらでもいると思う。

それでも、尊敬する課長にそう言われると嬉しく思う。

「すぐでなくて大丈夫です。こちらこそ無理を言って申し訳ありません」

私はペコリと頭を下げた。

課長は苦笑いを浮かべながら、退職届を引き出しに仕舞っていた。