名前を見ると、さつきさんからの電話だ。


「もしもし」
「佳苗ちゃん! 美希ちゃんが破水したと思うの、今から診療所に連れていくから開けてくれないかしら?!」


破水は時間の勝負だ。


「すぐ診療所に行って準備します!」


そうして、電話を切ると隣に寝ていた透悟さんも起きる。


「行くか」
「はい」


偶然か、この日は少しだけ出掛けていたので透悟さんは家に車で来ていた。
おかげで五分で診療所に着き、出産のための準備をして整ったと思ったところに、美希ちゃんを抱える太一さんが飛び込んできた。


「佳苗ちゃん、頼む!」
「そのまま、こっちに連れてきて!」


先を歩いて診療所の休憩スペースに作った出産スペースに太一さんを連れてきて、布団に下ろすように言う。
下ろされた美希ちゃんは陣痛の波が強いのだろう、額には汗を浮かべている。


「美希ちゃん、様子見るからね。お腹痛みはいつから?」
「昨日の夕方から少しづつ痛んでたんだけど、不規則だし予定日前だから様子を見てたら日付変わる頃にパンって音がして水が……」


匂いからしてもそうだけれど、一応検査薬使い確認するとやはり破水。
すぐに抗生剤入りの点滴を打つ。


そして、子宮口を確認しようと覗けば余程の安産体質なのか、既に発露している。