だから、俺は真っ直ぐに佳苗を見つめて言った。
「佳苗、俺は佳苗の事を大切にしたい。出来ることなら西澤佳苗になって欲しい。まぁ、俺が支倉透悟でも良いんだが」
びっくりした目を向ける佳苗に、真っすぐ見つめて気持ちを話す。
「俺、ずっと佳苗が好きだ、愛してると言ってきたよな? 言わなくて後悔したから、俺は再会してから何度となく佳苗に伝えてきたつもりだ。本気にしてなかったか?」
その問いにはブンブンと勢いよく首を横に振る。
その様子に、ひとまずほっとするが問題は佳苗のことだ。
「伝わってるなら良かった。そして俺は後悔したからこそ、再会してから佳苗をよくよく見てきたつもりだ。女性特有の時期のものとそうでない事くらいは、見ていて分かっているよ。」
しっかりと目線を合わせると、佳苗は俺の言ってることが本当だと理解したようで、それでも躊躇うように俯いた。
「俺は今も佳苗が抱える悲しみを、支えられない程頼りないか? 俺は佳苗が大切だから無理にとは言わないが、このままだと俺達はどこにもいけないんじゃないか?」
そう問いかければ、佳苗は困り顔の中に迷いをにじませていた。
「佳苗、なにがあって佳苗はそんなに悲しんでるんだ?」
そう聞くと、佳苗は持ってきていた鞄から手帳を取り出すと、そこから紙を出してきた。
覗き見たそれは、最近の俺にも見覚えのあるもの。
驚きを隠さず佳苗を見れば、悲しげな笑みを浮かべていた。



