「佳苗、今日は俺の家に来ないか?」
そう聞いたのは十二月になる手前。
佳苗の沈む日々が落ち着いてきた頃だ。
梅乃さんにもそれとなく聞いてみたが、やはり話してはいない様子。
「島に来た頃からそうなの。この時期になると佳苗ちゃん沈んだ顔になるのよ。理由は聞いてないわ。大丈夫? って聞くと笑顔で返事をするから、踏み込めないのよ」
そう聞いたので、沈んだ日々が落ち着くのを待って聞くことにした。
仕事場で出来る話でもないだろうから、俺の家に誘った。
「透悟さんのところですか? 別に構いませんけど。家でもいいですよ?」
そう返されたが、家に誘うネタは持っている。
「実家から粉やらなんやら届いてな。好きだったろ? たこ焼き」
そう言えば、フワッと微笑む佳苗。
「懐かしい。久しぶりに食べたいです、透悟さんの作るたこ焼き」
「おう、食べさせてやる。だから今日は俺の方な?」
「はい!」
そうして、仕事を終わらせると二人で歩いて俺の家へと向かう。
「お邪魔します」
そうして帰宅すると、最近は自ずと互いに勝手知ったる感じで動く。
俺がたこ焼きの準備を始めれば、佳苗が台布巾でダイニングテーブルを拭いたり、取り皿や箸を用意する。
昔より、俺も動くようになったのでかなり連携が取れて、一緒に居ると心地良さが更に増していて、なかなか困る。
家から返したくなくなるから。
今のところ、日々我慢と忍耐で送り返している。



