俺がこの島に来て数ヶ月。
すっかり冬が近付いていた。


最近はお互いに家を行ったり来たりしていて、穏やかに日々を過ごしている。
付き合っているわけでも、結婚を提案してもいない。
それでも、少しづつ俺と佳苗の距離は近くなってきた。


折に触れて、俺は佳苗を好きだと、愛していると伝えている。
最初こそ、言葉を伝えると困った顔をしていた佳苗。
それでも根気強く、どこまでも何度でも思いを伝え続けている。
最近は、「もう! 何回も聞いてますよ!」と照れて頬を赤くして顔を逸らす佳苗を見て、俺の心も暖かくなる。


一緒に過ごす時間が増えて気付いたのは、佳苗が時折顔を曇らせたり、悲しそうな顔をしては空を見上げること。
亡くなったご両親を思ってかと様子を見ていたけれど、どうにもそれだけではない事に気付いた。
注意深く見守ると、それは小さな子や赤ちゃん、妊婦と接する時にもチラッと見せる事があるのに気づいた。


本人は、隠しているのかもしれない。
けれど離れたあいだになにかあったのだろうか?
聞いてもいいのか考えあぐねている間にも時は過ぎ、この島にもクリスマスの雰囲気が漂い始めていた。


その頃には、その陰る表情が日々増えてきていた。
仕事こそこなすものの、日を追う事に手隙になると佳苗は沈んだ顔をしていた。