そうして迎えた食事会で、俺は素直に彼女に気持ちを伝える事にした。


その前に、悲しいが俺の前から姿を消した。
それが何故なのか、その事を聞かなければならない。


「五年前、俺は君の気に障ることをしたのだろうか? 愛想をつかして姿を眩ませるほどの」


俺の声は、いつにないほどに苦しげに零れていく。
思い出しても辛い。

電話も出てくれず、メッセージも見てもらえず。
彼女の家へと向かえば、そこは既に空室になった部屋。


初めてといえる唯一愛した女性になにも言われず、居なくなられたこの絶望はかなりのものだった。

俺はその頃、確かにバタバタしていた。
協議離婚での話し合いと、仕事に追われていたからだ。
これが済まなければ、彼女を迎えに行けないからと必死だったのだ。


しかし姿を消した彼女の事を思えば、あの時の俺はなにを優先しなければいけなかったのかを間違えていたのだと、気づいた。

愛のない結婚で離婚する予定であること。
そして君とずっと一緒に居たいから、結婚したいのだということも考えているだけで言葉にして彼女に伝えていなかったこと。


そしてなにより、大切な両親を事故で亡くした直後の君の側に、何故行ってやらなかったのか。
仕事や離婚のことで忙しいとか云うよりなにより、彼女の傍へと行くのが一番だったのだと。


そんな大変だったろう時。
悲しく、誰かに縋りたいくらいになると思うそんな時に、俺は彼女から連絡すら貰えなかったことで、頼る相手になれてなかったという事を、突き付けられたのだった。


しかし、その事を振り返り話を聞かない限り俺と彼女はなにも進まない。
だからこそ、逃げられないこの場で話を切り出した。