島に来て、再び愛しい彼女に出会えた。
そのことに俺はとても喜んでいた。


しかし、彼女ははっきりとした線を引いている。
仕事上の会話はするものの、プライベートなことを問う素振りを少しでも見せるとスっと離れてしまい、話もさせてくれなかった。


話さないことにはなにも進まない。
俺はそれを中嶋先生に相談した。
ここに来て、一週間が過ぎた頃だ。


お宅にお邪魔すると、梅乃さんとともに待っていてくれたようで、二人で俺の話を聞いてくれた。


「佳苗ちゃん、普段は穏やかで落ち着いた子なのよ? でも確かに先生が来た辺りから、常に気を張ってるわ」


そう、俺がいると彼女は酷く張り詰めている。
だからこそ、俺は彼女に声をかけるタイミングを掴めずにいた。


「このままだと一向に話もできません。かといって、いきなり彼女の家を尋ねるわけにも行かず。悩んでいます」


そう、正直に現在の状況と心境を告げた。


「なら、ウチで食事会をしてここで話せばいいわ」
「そうだな、ここになら佳苗ちゃんも来るだろう」


中嶋ご夫妻にそう提案してもらい、その食事会を開いてもらうよう、頭を下げた。


彼女のことになると、俺はなりふり構わず必死だ。
一度、完全に逃げられているのだ。
もう、彼女に逃げられたくはない。