そんな感じで、少し離れて終始お互いに話すこともなく中嶋先生のお宅に辿り着く。


フッと今日も空を見れば、星が綺麗に見えた。


私と先生をまとめて呼ぶ、親睦会とは言っていたけれど……。
私はできる限り、仕事以外では関わりたくないと思っているので今回はちょっと避けられなくて憂鬱だった。
先生達に誘われてしまっては、この人と色々あって無理ですとは言い出せない。


何事もなく、無事にご飯を食べて帰れると良いんだけど……。
それはなんとなく無理な気がした。


「お疲れ様です。お邪魔します」


そう声をかけて家に入っていく先生の横顔は、なにかを決意したように強い意思を感じたから。


やっと穏やかな暮らしになってきたと、落ち着き始めた私の心を揺らさないで。
蓋をして、たくさんの鍵をつけて深く深く沈めた箱を開けようとしないでほしい。
私はただただ、ここで穏やかに人の役に立つ仕事に誇りを持ちながら暮らしていきたいだけなんだから。


西澤先生と再会してから、穏やかにしているつもりでも常に心にゆとりは無く、気を張った日々になっている。
落ち着くのは、自宅で一人になった時だけ。


今日もまだ気を張ったまま。
少しのため息をこぼして、私は気持ちを張り直すと後に続いて行く。


「お疲れ様です。お邪魔します」


そうして、馴染みのある中嶋先生のお宅に一歩を踏み出した。