妊婦さんを見ると、つい羨望の眼差しになってしまうのは、五年前にお空に帰ってしまった子を想うから。


誰のせいでもない、分かっている。
けれど同世代の子ども達を見れば、あの子が産まれていたらと度々思う。


妊婦さんを見れば、私もこうなりたかったという思いは、今も確かにある。
なかなか消えるものでもないだろう。


それでも月日が経ち、時間が経つ毎に、少しずつ穏やかに子どもも、妊婦さんも見られるようになった。


それに美希ちゃんはこの島に来た私に、優しく接してくれた島に来て初めての友達だ。
今は彼女が順調な妊娠経過を辿り無事に出産出来るように、私の出来る全力でフォローをしていくつもりだ。


検診予約は朝一番なので、エコーや尿検査、血圧計などの準備をしていると診察室に人の気配を感じた。


「おはよう。今日は朝一番は妊婦検診だったっけ?」


挨拶とともに聞いてきた、西澤さんに私は準備の手を止めず答える。


「はい、そうです。初産婦さんです」
「じゃあ、カルテと今までの経過出しておいて」
「分かりました」


私と彼の会話は、終始こんな感じで仕事の事で事務的な事しか話さない。
私と話したがっている気配を察知しているが、あからさまにそれを避けているからだ。


今更話すことなんでないと、私は思っているからこその態度だ。
しかし、余り頑なになりすぎると仕事に支障が出るかなと少し悩んでいた。