人生において、不幸というのは時に畳みかけるように重なり襲い来る時もあるのだと。
そうなった時に初めて知った。


人生において、苦しく悲しい日々はこれ以上ない程に私を苛み、苦しめ、暗い底に落とした。


たったひと月のあいだに……。



私は、仕事も、恋人も、家族も失ってしまった。


仕事に関しては、失わざるおえなかった。


私は、そこにいる事に耐えられなかったから……。


支倉佳苗、当時二十二歳。
看護学校を出たばかりの新米看護師だった。
世間を知らなかった私は、そうして仕事も恋人も、大切な者も失った。


そこに畳みかけるように不慮の事故により両親も失い、一人っ子だった私は全てを取り仕切り、その雑事全てをこなしたあと、抜け殻の身体と心をどうにかしたいと考えた。


しばらく考えた後で私は仕事を辞めて、自宅アパートを引き払い、片付け等も済ませて実家も売りに出して手放した。


そうして失った物と得た物を抱えて、長年過ごした場所からひっそりと姿を消した。


もう、ここに私を必要とする人も私が必要な人も居なかったから……。


そうして傷を負ってそれを抱えたままに、私は新たな土地でひっそりと新しい生活を始めたのだった。