「さて、風呂で温まろう。おいで。」

咲良はマリコの手を引いてバスルームへ歩いた。

バスタブにはすでに湯が波々と湯気だっていた。

毎晩定刻にバスタブが湯でいっぱいになるようタイマーをセットする習慣だ。

「えっ、もうお湯をはったの?」

「俺は帰ったらすぐ入るタイプって覚えておいてね。」

と言いながらマリコのブラウスの小さなボタンを丁寧に外していった。

「咲良、私自分でやるけど。」

「いいから、俺の楽しみを奪わないでくれる?」

「くすくす。」

「マリさん、髪をアップしよっか。」

咲良はマリコのロングヘアを薄めのフェイスタオルで器用にくるんで、頭のてっぺんでキュッと縛った。

「どう?気持ち悪いところはない?」

「咲良って、奥さんみたいね。」

アッハッハッハ。

マリコは気持ち良く笑った。

「なんとでも言ってよ。俺はマリさんにベタ惚れなんだから。」

マリコは爪先立って咲良にチュッとキスした。

「今のもう一回やって。」

「わかった、わかった。」

咲良はマリコからの軽いタッチキスを何度もせがんだ。

「何回やればいいの?」

「100回。」

「勘弁してよ。私、お風呂入りたい。」

「OK。今夜もたっぷり温めてあげる。」

「私を甘やかすのがうまいのね。」

ザブンと二人で湯船につかった。

「そうかなぁ、俺は焦らすのもうまいと思うよ。」

「はは~ん。そのセリフは誰もに言ってきたのね。」

「気になる?」

「全然。」

「くっそ、気にしてほしいのに。」

「そういうところが咲良らしい。」

「あ~もう、少し黙って。」

「もうひとこと言わせてくれる?」

「何を?」

「咲良、愛してる。」

「ヤバい。」

「何がヤバいの?」

「優しくできない。」

「それ、言い方が間違ってない?」

「マリさん、今夜は俺からのプレゼンの成功祝いを堪能して。」

咲良は濃密な愛の夜をマリコにプレゼントした。

リビングにあるLED菜園では

今夜もミニ野菜がみずみずしく育っていた。


    ~ 完 ~


最後までお読みいただきましてありがとうございます。
お楽しみいただけたら幸いです。
これからも甘酸っぱい恋物語をお伝えできたらと思っております。
北原留里留。