昇りのエスカレーターで地上に向かっていると、外からの強風にさらされた。

真冬の凍てつく風がその場の全員に容赦なく吹き付けてきた。

一瞬止んだと思ったら次の猛烈な吹込みに皆顔をそむけるか、下を向くかしてやり過ごしたが、樹里だけはふらついてしまった。

なぜならほこりが混じった風のせいで右目にゴミが入り、その痛さに目をつぶってしまい、ぐらりと傾く自分の身体を立て直すため、左手でベルトをつかんだつもりが、重いバッグが肩から腕へ下がっただけで、右手は目をそっと抑えたまま倒れていく自分を意識できた。