掃除機を物置にしまって、居間に戻る。

家から持ってきたタッパーを風呂敷に包みながら、私はぼんやりと横に置いてある飾り棚を見た。

そこには、たくさんの写真立てが置かれている。

幼稚園のお遊戯会、小学生二年生の運動会、温泉旅行、遊園地、水族館。色んな場面の色んな写真。

中でもいちばん大きくていちばん目立つところに置かれているのは、三島家の前で撮影された家族写真だ。

まだ小学生だったころの優海と、ご両親と広海くん、そしてその中に当たり前のようにまじっている私。

優海は満面の笑みでピースサインをして、反対の手はしっかり私の手とつないでいる。

私は少しだけ照れくさそうな表情で小首を傾げている。

まだ何も知らなかった私。

優海が数年後に家族を失うことになるなんて、この温かい人たちがこの世からいなくなってしまうなんて、これっぽっちも思っていなかった私。

写真立てを手にとり、胸に抱きしめる。

優海の大切な家族は、いなくなってしまった。

彼はひとりきりで生きていかなくてはいけない。

目をあげると、神棚があった。

優海は今でもちゃんとお供えをしているらしい。

神様は、どうして優海の家族を奪ったんだろう。

中学のころに優海と交わした会話を思い出す。

龍神様の石に手を合わせる彼の背中に向かって、『神様なんかいないよ』と私は言った。

『神様なんかいるわけない。ちょっと考えれば分かるでしょ』

優海の身に起こったことを思えば、優海が置かれた境遇を考えれば、神様なんて嘘だというのは分かりきったことだと思った。