私は優海の肩に頭をのせ、目を閉じた。

打ち寄せる波の音と、優海の穏やかな呼吸の音が鼓膜を揺らしている。

これ以上ないほど満ち足りた気持ちだった。


そっと瞼をあけて、月を映す海を眺める。

吹き抜けていく夏の夜風が心地よかった。


月明かりを一身に浴びながら、私は海に向かって心の中で語りかける。


神様、ごめんなさい。前言撤回します。

私はやっぱり優海と離れることはできません。

私と優海は、貝殻のかたわれ同士と同じだから。

お互いに他の誰とも違うから。

だから、私のやり遂げたかったことは、どうやら無謀な試みだったようです。

諦めて大人しく運命を受け入れます。

だからどうか、『あの日』までこのまま静かに、彼と一緒にいさせてください。

ただそれだけでいいんです。


叶うのか分からない願いを、届くのか分からない祈りを、私たちの海と風に捧げた。