その夜は雨が降っていた。

ゲリラ豪雨で外に出ることも出来ないので私やママ、パパは家にいた。

夕食ができる頃、インターフォンが鳴った。

メニューはママ特製パスタとサラダ、スープだったのを覚えている。


「あら?羽音、霧火ちゃんよ」


画面を見て、ママは慌てたように外へ出た。

一軒家なので玄関まではすぐだ。


「どうしたの霧火ちゃん!?羽音、タオル持ってきて!」


ママを追って玄関に来ていた私に、鋭く命令か下る。

霧火ちゃんはずぶ濡れだったのだ。

驚きながらもお風呂場から新しいタオルを取ってママに渡す。

 
「あ、あの…」

「その猫ちゃんはそっちに!霧火ちゃんは身体を拭いて。羽音、猫ちゃんをよろしく」


霧火の腕にはしっかりと猫がいた。

足に包帯が巻かれている猫を受け取って、痛まないように気を付けながら身体を拭いてあげると、猫はじっと私を見た。


「一体どうしたの、霧火ちゃん…入って入って」

「霧火ちゃん、大丈夫?」


ママに促されて戸惑う霧火に訊ねると、何故か悲しそうに目を伏せる。


「ごめんなさい…あの猫、どこにも引き取り手がいなくて。わたし、探してみたのだけど、いなくて。手当てはしてもらったけど、家では駄目って」

「あ…そうなんだ」


どう反応していいか分からない。

だって、あの猫は霧火の家で飼うと思っていたからだ。

まさか引き取り手を探していたなんて知らなかった。

ママもそう思っていたはずだ。

だが、見捨てることもできない。

したくない。


私は唇を噛み締めた。