砂糖より甘くコーヒーより苦く

「美緒お前、顔色悪いよ?」

「晴斗に……会いたいよ……」

「「……!」」

晴斗がいないと、あたしの朝が始まらない。いや、始まろうとしない。晴斗がいないと、あたしの中では夜中なんだ。

〈「おはよ、美緒」

「美緒ー、起きろー」〉

この言葉がないと、起きた気がしない。

そして、この声が聞こえないと、あたしの中に、恐怖、不安、寂しさが生まれ、体中をグルグル回るのだ。

「晴斗に……会いたいよ……」

「直樹……」

「ああ……美緒、会いに行こう。今日は学校、休め」

パパの運転する車に乗り、病院に向かった。いつもなら病院まで、30分ほどなのに、今はそれよりもかかった気がした。

「美緒、病室、覚えてるか?」

ーーブンブン

あたしは横に首を振った。

「じゃあ、一緒に行こう。帰りも家まで送るから」

ーーコクッ

「じゃあ、行こう」

あたし達は、7階に向かった。

パパは、706号室の前で立ち止まった。

「帰る時は、電話して。すぐに来るから」

「うん……」

「じゃあ、1人でいいな?」

「うん……」

「じゃあまた」

パパは、微笑んで、お仕事しに行った。

[高木晴斗様]

現実なんだよね……

ーーコンコン

「はい」

やっぱり晴斗だ、もう起きてる。

ーーガララ

「……!美緒……おはよ」

一瞬驚いたようだが、すぐに微笑み、おはよと言った。

「おはよ」

やっぱり、晴斗といると、落ち着く。