途中で乗り込んでくる人もなく下まで降り、エントランスを出る。情けないけど榊に迎えにきてもらうしかない。
 手にしたスマホの電源を入れる。
 実はわざと電源は落としてた。GPSで遊佐にはすぐに居所が知れる。こんな遅い時間にまた出かけるのが分かったら、余計な心配どころの騒ぎじゃない。相手は仁兄だし。

 ・・・って読みの甘さが痛すぎた。起動したスマホ画面に目を落とす。そこには遊佐と榊からの着信のバナーがずらり・・・・・・。

「・・・・・・バレた・・・・・・」

 海よりも深い溜め息。直後に榊からの着信。腹を括って、神妙に応答する。

「・・・はい、もしもし・・・?」

『何でそんなとこに居やがるのか、説明してみろ・・・』

 ドスのきいた低い唸り声からは冷気すら漂ってきそうな。

「えーと・・・ゴメン。謝るから、とりあえず迎えに・・・」

『そこから1ミリも動くなよ、・・・ドアホが!』

 
 ・・・・・・・・・あー怒られる、おこられる、おこられる・・・。脳内にエコー。



 それからものすごい神速で、セレナが目の前に到着した時。運転席から降りてきた榊の鬼のような顔は、夢に出てきそうなホドの形相だった・・・。