結局テレビを観たり、雑誌を読んだりでダラダラと時間をやり過ごし。空が暗くなり始めて夕飯を何にしようかと考える。冷蔵庫の中身を思い浮かべても、お肉と野菜の炒め物くらいが関の山。食べないと榊にも怒られるし。

寝転がってたベッドから仕方なく起き上がった。そのタイミングでスマホが着信音を響かせた。画面には『藤さん』の表示。
 
「えぇぇっ?!」

びっくりして落としそうになる。藤さんっ?!なんで?!思い当たるふしも無く、たじろぎながら応答した。

「はい、もしもし・・・っ」

『・・・ご無沙汰してます、宮子お嬢さん』

聴こえたのは少し甘さも隠れた低めのトーン。

「あ・・・いざわさんっ、ですかっ?」

思わない素っ頓狂な声が出た自分が恥ずかしい。慌ててこないだのお礼を伝える。

「あのっ先日はお邪魔させていただいて、ありがとうございます・・・!」

『いえ・・・。織江が差し出がましい真似をしたようで、藤から聴きました』

「そんなことないです、あたしと遊佐のことを本当に心配してくれて嬉しかったです。織江さんは悪くないですから、藤さんにもそう伝えて下さい」

必死に弁明。すると向こう側で笑んだ気配がした。 

『自分が若なら、お嬢さんに惚れ直したところです』
 
声にならない絶叫が全身を駆け巡り。脳ミソが一気に沸騰して無くなるかと思った。相澤さんの破壊力は、哲っちゃんを遥かに凌ぐ恐ろしさだった。