「・・・・・・あたしも離れたくないんです。どうしても、遊佐しかいないから」

 分かってよ。諦めないでよ。離さないでよ。
 ココロが叫ぶ。

「ユキちゃんにも、何もしてないのに逃げるなって言われました。後悔するからって。でも・・・遊佐の性格は分かってるから、たぶん自分を曲げることはしない。玉砕覚悟・・・です」

 笑おうとしたのに最後は声が震えた。
 一生懸命に自分を奮い立たせようとするたび、孤独な戦いに思えて。心細さに折れそうになる。きっともう無理だ・・・って。
 
「・・・宮子さん」

 もう一度あたしを抱き寄せて、織江さんが優しく。

「わたし達、少し似てますね。誰も悪くないのに・・・歯車が噛み合わなくて辛い思いをしたり。渉さんも・・・決めたことは翻さないひとですから」

 なにか過去を重ねてか、悲しそうな気配が滲む。

「誰もが望む幸せにならないのが現実だと・・・わたしも思います。それでも宮子さんが遊佐さんと結ばれるのを、心から祈ってます。遊佐さんやお兄様の気持ちよりも・・・宮子さんが望む幸せを叶えてほしいから」


 彼女の言葉はとても真摯で。あたしの中に静かに響いて、溶けてった。
 答えが何か導きだされたワケでもない。光が見えたワケでも。・・・でも。

 暗く波立ってたココロは凪いで。織江さんの華奢な手に包まれ、掬ってもらってた。