愛は、つらぬく主義につき。

「いつかあんたが自分から身を引くようなこと言い出す気がしてた・・・。あんたの性格はよく分かってるから・・・そういう男だってコトも、いつだってあたしと家のことを考えてくれてるってコトも」

遊佐は寄り添うあたしを受け止めたまま、黙って聴いてた。

「仁兄にも言われたよ、あたしを守れないで苦しいのは真だから解放してやれって。・・・遊佐の為を想うならって」

あたしは込み上げてくるものを堪えて息を吐く。

「・・・仁兄と結婚すれば、これ以上あんたを傷だらけにしなくて済む。あんたを楽にしてあげられるって・・・あたしが一番分かってるんだけどね」

遊佐が貫こうとしてるもの。
あたしが貫きたいもの。
どっちかが折れるか曲がるか。
貫きとおすか。
 
不意に織江さんが思い浮かんだ。あんな風に相澤さんに道連れにしてもらえる彼女が羨ましい。相澤さんに全てを委ねられる生き方が。

遊佐なら絶対あたしを追い返す。笑って、オマエは来るなって。地獄行きなんかオレ一人で十分だって。自分はどうなってもあたしだけは、・・・って。 

そうじゃないの、なんで分かってくれないの。
 
「あたしはあんたを引き摺ってでも一緒にいたいの。あんたの傍でなら笑って死ねるの、このさき何があっても」

祈るような思いだった。

「あたしの幸せは何の苦労もしないことじゃないよ。守られてさえいれば幸せだなんて・・・思えるわけないよ。あたしを愛してるなら、仁兄と結婚しろなんて言わないでよ、あたしだって」

織江さんの言葉が過ぎる。

「遊佐と離れて生きられるほど強くないんだよ・・・」 

僅かにあたしの肩を抱く遊佐の指先に力が籠った。

ほんのちょっとでもいい、届いて。今はそれだけでいい、何度だってあたしは伝えるから。おばあちゃんになるまでだってずっと、あんたにだけ。

「ほかの誰とも結婚しないから。あんたが嫌がっても一生プロポーズし続けて、首を縦に振るまで傍にいる。あたしには遊佐だけだから。・・・あんたの代わりは誰もなんないから」

胸の内で大きく息を逃した。遊佐の方にそっと顔を向けると、こっちに傾いた視線と合う。 

「結婚して遊佐。あたしを幸せに出来るのはあんただけなの」