「・・・ああ見えて仁は、昔からお嬢に惚れてたよ」

 やんわりと。哲っちゃんはあたしに畳みかける。

「贔屓目で悪いがね。仁なら・・・と俺も思う。一緒になるのを本気で考えちゃくれないかい」

 眼差しは真っ直ぐにあたしに向けられてた。揺らぐことなく。

 あたしの意思に関わりなく。どんどん外堀から埋められてく。
 たった独り、武器も食糧もなく籠城を余儀なくされる。孤立無援。味方はいない。



 ねぇ・・・遊佐。
 あたしが降参したらそれで良かったって。
 あんたは心から笑って、・・・そう言えた?