仁兄は眼鏡の奥から目を細め、あたしをじっと見据えてた。あたしも今度は逸らさなかった。
 
「・・・いずれお前は俺と結婚する」

「・・・・・・・・・・・・」

「真が何を望んでるかぐらい、分からない女じゃないだろう」 

 手を放し言いながら立ち上がると、真顔で見下ろされる。

「宮子。・・・お前を守ってやりたいだけだ。俺も・・・真も」



 そう言って微かに口の端を歪めた仁兄の眼差しが、儚げに揺れた。そんな風に見えた。


 
 一人残された部屋で。あたしは自分が出来ることは何かを考えてた。
 そして決めた。

 大きく息を吸い込み、背筋を伸ばして瞑目する。お腹に力を籠め、ベッドから降り立つと部屋を出て、離れに向かって歩き出す。

 おばあちゃんの言い方を借りるなら。
 ここからが正念場だ、臼井宮子の。