単なるあたしの誕生日なんだけど。恒例で、実家でも身内が総出でお祝いをしてくれる。
 事務所に詰めてる人達にも料理とお酒を振る舞うし、本物の親戚とか、お父さんと杯交わした兄弟分のオジサマも顔を出して何だかんだと毎年賑やかだ。

 今夜は泊まるのを見越して、午前中で掃除洗濯をざっくり片付け、半ば強制的に迎えに来た榊の車で午後二時には実家に到着した。

 表門から乗り入れ正面玄関に車を付けた榊。外から操作されたスライドドアが開けば。この蒸し暑さの中、きっちり黒尽くめのお兄さん達が五人ぐらいずつ左右に別れて、並んで立ってる。

『お疲れ様です、宮子お嬢!』

 野太い声で一斉に。

「こんにちは、ご苦労さまです」

 ニッコリ笑って平然を装ってるけど、相当気恥ずかしい。
 でもおばあちゃんの教えどおり『下の者には、毅然と』。偉ぶらず侮られず、が極意なんだとか。  
 にしても。出迎えは要らないんじゃないかなぁ。うん。フツウでいいんだけどなぁ。
 乾いた笑顔のまま、普段着のあたしは花道?を通って家の中に入った。



「お帰りなさい、お嬢」

 三和土(たたき)でミュールを脱いでたら、背中から渋い声がして振り返った。

「哲っちゃん!」

 三つ揃いで迎えてくれた愛しのダーリンに、いつものように遠慮なくじゃれつく。
 大きな掌があたしの髪を撫で、不意に耳元に甘く囁かれた。

「・・・二十五か。好い女になってきたな」

 ふ、にゃああああぁぁ~~っっ。
 思わず、意味不明な叫び声が脳内を大音響で木霊した。

 ・・・ゴメン遊佐。本気で哲っちゃんの愛人になってもいいかな?