「あさっての土曜、本家でも誕生会だろ?」

「なんか結局、毎年ただの宴会だよねぇ。ほんとは若衆のオニイサン迷惑してんじゃない?」

「タダ酒呑めるって大喜びだケド?」

「だいたい言ってもないのに、オジサン達から薔薇の花束とか届くんだよ? あたしの誕生祝いじゃなくて、おじいちゃん達のご機嫌うかがいなんだから全く」

 遊佐の言葉にうんざり顔で切り分けてもらったケーキをつつくと。シニカルな笑いが返った。

「諦めな。今更だから」

「今年も会長からは着物のプレゼント?」

 ユキちゃんから視線を傾げられる。

「うん。おばあちゃんが見立ててくれんの。あんまり着る機会ないんだけどさ、持ってなさいって」
 
「チヨちゃんは撫子風美人さんなんだから似合うわよ。面倒がらずに着てあげなさいな。マコトちゃんも着流し似合うと思うのよねぇ、哲司さんの息子だし」

「遺伝子って関係あンの?、ユキ姉」

 クスクス笑って遊佐が言う。

 Tシャツにワークパンツって普段着みたいな恰好してても、どっか目を引く男。笑う顔も横顔も、程よく甘くて。特にこういう店だとね、品定めしてるみたいな他からの視線を時々感じる。

 左手首のバングルは、二年前の遊佐の誕生日にあたしがプレゼントしたやつ。右腕のGショックはその前かな。
 そろそろ左の薬指にも嵌めてやりたいなって。

「遊佐。左手貸して?」

「んー?」

 何のコトか分からないで、されるがままの遊佐。
 中指にはクロムハーツのごついのが嵌まってるんだけどね。
 指を絡めると、手を繋ぐのと勘違いしたのかやんわり握り返された。
 重なってる遊佐の手の甲を、自分の口許に引き寄せて。
 何も嵌まってない薬指に接吻(くちづ)けた。

 遊佐が少し目を見張ってこっちを向く。
 あたしは仄かに笑んだ。

 
 本当に欲しいのはね。
 遊佐だけだからね。