「チヨちゃん、誕生日おめでと~っ」

「ありがとぉ、ユキちゃんっ」

 カウンター席でカクテルグラスを合わせて乾杯。 

「宮子おめでと」

 隣りに座る遊佐からキスと紙袋。・・・うわ、Chloéのバッグ! 思わず抱きつく。

「遊佐アイシテルっ」

「ハイハイ」

「榊は?」

 その奥の、でっかい男にも声かけると。ナンか飛んできた。

「ちょっ、投げないでよ、もうっ」

 リボンのかかった水色の小さい箱。開けてみるとティファニーの定番、ハート型のトップのペンダント。

「榊も愛してるー」

「・・・・・・・・・」

 横目で睨まれた。


 今日、六月十二日は。あたしの二十五回目の誕生日。
 貸し切りってワケには行かないけど、亞莉栖でささやかに誕生日をお祝いしてもらってる最中だ。 

「ハイ、あたしからはバースデイケーキ~!」

 ユキちゃんが言って目の前に出してくれたのは。金箔の乗った芸術品みたいなザッハトルテ。しかもホール。

「おとといテレビで、なんか有名なパティシエさんのだって紹介してたから。チヨちゃんに食べさせたいなって思って。予約がいっぱいで、三ヶ月待ちなんですってー」

 にこにこと。
 三ヶ月待ちのケーキをどうやって手に入れたのか、・・・とかは訊かない方がいいよね、きっと。