たっぷりの生クリームとクランベリーソースが掛かった、ふわふわのパンケーキを口に放り込んで紗江が「何にせよ、あたしはね」と口の端で笑む。

「宮子の味方だから。いつでも相談に乗るからね?」

 こないだユキちゃんにも言われたな、それ。
 女同士の結束って心強い。ほんと勇気の素だよ。

「ありがと紗江」

 笑い返しながら、仁兄のコトが頭の片隅を過ぎった。・・・相談てほどじゃない、まだ今は。気付かなかったフリ。
 
「そう言えば、榊クンは結婚とかは? 彼女いないの?」

「榊? 訊いても教えてくれないんだよねぇ」

 あたしが肩を竦めると、紗江はどうしてか気の毒そうな顔。

「・・・あーなるほどね」

「?」

「何でもない、何でもない」

 向こうから訊いておいて勝手に完結された。



 その後も尽きないお喋りを沢山した。名残惜しかったけど、また次の再会を約束しあって笑顔で別れた。

 腕時計を見るともう五時すぎ。何か夕飯を買って帰ろうかと考える。
 実は哲っちゃんと瑤子ママは夫婦水入らずの旅行中で。明日の夜まで留守だった。
 実家に食べに行くのも手なんだけど。

 バッグからスマホを取り出し、駅ビルの専門店街の入り口で端に寄って電話をかける。

『終わったの? 紗江、元気だった?』

 出るなり遊佐が笑った。

「うん元気。二人にも会いたがってたよ?」

『そっか。今どこ? 迎え行くし』 

「日生町の駅だけど、なんか買って帰ろうかって思って。食べたいモノない?」

『んーたこ焼き食いたい』

 は?

「オヤツでしょ、それじゃ」

『さっき大姐さんが来て重箱置いてったンだよ。混ぜご飯とおかず。だからメシは大丈夫』

 抜かりないなぁ、おばあちゃん。お返しにお菓子でも買って帰ろっと。

「じゃあ6時くらいにロータリーに来て? たこ焼き買っとく」

『了解。金くれるって言っても、知らないオッサンに付いてくなよー?』

「なによ、オッサンって」

 無邪気な遊佐の笑い声が弾けて聴こえた。




 ねぇ遊佐。
 あんたがどうしても結婚に踏み切れない、その理由(わけ)ってほんとうは何? 訊いたら答えてくれる?

 ・・・・・・自分ひとりで抱えて背負って。笑って、あんたはいつも何でもない風に。
 あたしは信じるだけ。でもね。

 それが時々もどかしくて。・・・・・・寂しくなるんだよ。