色んなタレで味を変えたり、結構な個数を大人六人で平らげた。

「あーヤバイ。オレ重くなってるからー、寝てる間に宮子ツブれるー」

「あんた食べ過ぎでしょ! 胃薬飲む?」

「んー、もーちょっとしたら飲むー」

「ハイハイ」

 酔いがいいカンジに回ってくると、遊佐はちょっと子供っぽくなる。ソコも可愛いんだけどね。 


 空いた食器を下げ、流しで洗い物を始める。少し動かないと、あたしもお腹がキツイ。

「宮子、冷たい水あるか」

「あ、うん。ちょっと待ってー」

 仁兄の声に手を拭き振り返る。
 薄っすら赤みが差した顔。お酒は強いんだろうけど、どれだけ呑んでも全く顔に出ない哲っちゃんホドじゃあないかな。

 冷えたミネラルウォーターを取り出そうと、背を向け大型冷蔵庫の扉に手をかけた瞬間。
 あたしの顔の脇にいきなり両手を付かれた。体温を感じるほどすぐ背後に仁兄。あたしは囲いの中。・・・身動きが取れない。

「・・・どいて仁兄」

 目前の扉に向かい合ったまま声だけ低く放つ。それでも十分、冷静だった。
 リビングにはみんなが居る。こんなトコで何が出来るワケがない。

「・・・・・・宮子」

 後ろから耳許に顔が寄せられた気配。反射的に小さく躰がすくんだ。

「・・・俺は本気でお前に惚れてる。お前を守る為なら、どんなに恨まれても構わねぇよ」

 静かな声だった。

 あたしはただ茫然と。立ち尽くすだけ。
 混乱して何も言えない間に、すっと離れて仁兄はキッチンから出てった。


 本気。・・・って。
 唇を噛みしめる。
 そんなのどうしろって。・・・言うのよ、仁兄っ・・・!

 あたしは心の中で呻くように叫ぶしか。・・・なかった。