お父さんと哲っちゃんが、仁兄との結婚を仕向ける言い方をしたのも。追い込むような厳しい言葉を突き付けたのも、すべては一か八かの賭けだった、とおばあちゃんは口許に涼しそうな笑みを覗かせる。

「真さんも一徹ですからね。私の孫ですから、宮子も負けないだろうと信じてはいましたけれど」

 つまりは。“二人一緒に崖の下に突き落としたら、仲良く這い上がってくるに違いない作戦”・・・だったってコトらしい。

「・・・仁さんは辛い役どころだったでしょう」

 労わるように目を伏せてから、あたし達に向かって凛として微笑んだ。

「これからはどんな小さなことでも、二人で話し合ってお決めなさい。互いを尊重して、きちんと耳を傾けなさい。・・・夫婦なんてものは何十年経っても未完成なんですから。決して急ぐ必要など、ありませんよ」


 贈られた言葉は重みがあって。ココロに染み入った。
 あたし達には。道の先を仄かに照らし、手助けしてくれる家族がいる。
 愛されるシアワセがここには在る。
 この家の娘に生まれてきて良かったって。

 隣りの遊佐をそっと見上げ、あたしは心底・・・そう思った。