「・・・・・・もうあたし達の結婚、ぜんぶ通達済みだし。顔も見たくない相手とするワケじゃないし・・・。・・・・・・遊佐が結婚したくないのにどうにもなんないよ」

 自嘲を滲ませてあたしは幽かに嗤った。

「いいの。天罰なんだよきっと。・・・脚をダメにして、遊佐の人生を台無しにした罰。誰より苦しかったのは遊佐なんだから・・・・・・」

「宮子・・・・・・」

「心配しないでよ紗江。仁兄は・・・冷たそうに見えるだけで、あたしのコトは大事にしてくれるから。・・・・・・臼井の跡目も出来て丸く収まるんだし、・・・哲っちゃんやおばあちゃん達への恩返しだって思えばさ・・・」


 その気持ちは嘘じゃない。
 これまで愛情深く育ててくれたみんなに報いるには。仁兄との結婚が一番だってコトも。
 他に道がない。・・・そう納得させて、やっと自分に折り合いをつけられるようになった。
 だから紗江に結婚の報告をする決意も出来た。あたしと遊佐の行く末を、ずっと自分のコトみたいに見守り続けてくれてた親友に。

「あたしは宮子ほど物分かり良くないから、何ひとつ納得できないけどね」

 眉を顰め、紗江は難しい顔をしたままだった。




 夜の七時を過ぎて、まだ大丈夫だって言い張る紗江を促して、ファミレスを出る。
 ご両親だって子供の相手は大変だろうし、子供だってママを恋しがってるに決まってる。

「宮子、投げやりになったりしないで冷静にちゃんと考えて。宮子の為だったら何でもするから。助けて欲しい時は絶対に言うのよ?、いいわね?」


 駅で別れ際に、真顔で何度も念押しして紗江は帰って行った。
 


 ユキちゃんも、織江さんも、榊も紗江も。
 みんな、あたしの味方だって言ってくれた。

 
 ごめんなさい。許してくれますか。

 こんなカタチでしか、・・・終われない無力なあたしを。