紗江と織江さんにそれぞれスタンプ付きで、短く返信。
 仁兄にも了解のスタンプを送信した。時間にしたら一分もかかってないのに、画面を閉じる前に既読マークが表示されてた。

 ・・・・・・分かってる。
 仁兄は仁兄なりに、あたしと真剣に向き合おうとしてくれてるコト。
 家の為だけに結婚するんじゃないって、ちゃんと伝えようとしてくれてるコト。

 分かってても。
 
 遊佐が消えない。
 
 隣りに、目の前に、いるのがなんで遊佐じゃないんだろうって。

 遊佐ならあんな風に笑ったなぁって。
 
 ソコはこう言うよねって。

 あんたのコトなら何でも分かるんだから、・・・って。



 ・・・・・・仁兄に会うたび。優しくしようとしてくれる度。苦しくなる。応えられもしないのに。だから本当は・・・会いたくないって。

 胸の奥に痛みを感じながら、あたしは車のエンジンをかけた。