この場から逃げたい。 そう思うのに足が動かない。 彼と目が合った。 端正な顔立ちは少しも変わらない。 上質なスーツを着こなし、颯爽と歩く姿はまさに仕事の出来るエリートサラリーマン。 そんな彼の目は見開き、驚きの表情で小走りで近づいてきた。 「ゆずき!?」 久しぶりに聞いた懐かしい声は、私の心をより一層悲しくさせる。 彼に名前を呼ばれることがあんなに嬉しかったのに。 今の私に、これ以上彼を見ることは耐えられない。 かといって、ちっとも足が動かない。