どのくらい時間が経ったのだろう。

重い腰をあげて立ち上がる。

会議室の机に会議資料を並べていく。

コーヒーの準備もしなくては、と給湯室に向かおうとしたところで呼び止められた。

「ゆずきちゃん!追加資料があって~」

こちらに小走りでやって来る蓉子さんと一緒に、スーツケースをずるずると引きずっている男性が視界に入った。

確か2週間海外出張で、私は挨拶がまだだったことを思い出した。

「相原ゆずきです。よろしくお願いいたします」

「知ってるよ。面接の時以来だね」

専務はいたずらが成功した子どものような笑顔をしている。

紛れもなく専務だ。

面接の時は専務だと知らなかったけど。