そこまで考えて、ハッとした。


もしかしてそれが狙いなのかもしれない。


自分が同性愛だと気が付かれないために、わざと演技をしたのかもしれない。


そう思うと、途端に胸が痛くなった。


あたしは今健に利用されているのかもしれないのだ。


お弁当を作って一緒に食べる。


そんなの、周囲から見たらカップルにしか見えないのだから。


「ねぇ、健……」


「ん? なに?」


首を傾げる健に、あたしは開きかけた口を閉じた。


あたしは健の恋愛対象にはなれない。


それなのに『健はあたしのことどう思う?』なんて、聞けるはずがなかったのだった。