杏の背中にあるフェンスが大きく揺れる。


次の瞬間……バキッと音がしてフェンスが倒れて行くのが見えた。


杏が体勢を崩し、目を丸くして空を見上げる。


「杏!」


あたしの右手は空中をかいた。


杏がゆっくりと落下していく。


すべてがスローモーションのように見えたのに、あたしの手は杏に届く事はなかったのだった。