「杏。危ないからこっちに来て」


「あたしのせいだ。あたしが、あんなこと言ったから」


杏にあたしの声は届かない。


涙を流しながら必死で嗚咽を我慢しているだけだった。


杏が体重をかけたせいで、フェンスがギシギシと音を立てて揺れている。


「杏のせいじゃないってば。ねぇ聞いて? 健は同性愛者だったの。あたしと健が付き合えることは絶対になかった。それでも、恋が叶ったんだよ? すごいことなんだよ?」


右手を杏へ伸ばす。


しかし、杏はその手を掴もうとはしなかった。