ドンッと、一回だけ壁を叩いた。


向こうから何度も何度も返事が来る。


スミレはあたしに何かを伝えたいのかもしれない。


あたしはそれに返事をせず、テーブルの上のコップを足でけり落とした。


壁にぶつかったコップは勢いよく砕けて割れた。


その破片を後ろ手に掴み、つよく握りしめた。


痛みが全身を駆け抜ける。


恐怖なんてなかった。


ただ、その痛みがあたしが生きているんだと感じさせてくれていた。


この痛みの向こうにすくいがあるような気がした。


あたしは握りしめたガラスの欠片を、自分の手首へと突き刺したのだった。